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数学史5の2「現代数学」2厳密性抽象性
2026年05月29日
こんにちは。自分の中だけでは解決できない問題があります。飯田です。
19世紀後半から20世紀にかけて、数学は3つのテーマで発展します。実用性、厳密性、抽象性です。このうち「実用性」については前回お話しましたので、今回は「厳密性」と「抽象性」についてお話します。
19世紀、数学者コーシーは極限などの概念を定義し、厳密な解析学を目指します。この流れは、解析学以外のあらゆる数学分野に飛び火します。代数学から、確率論まで、さまざまな分野で、公理や定義、形式などの厳密性を考えました。日本の大学数学では、たいてい最初にこの厳密性から言及しますね。
集合、位相の分野で厳密性を目指したのがカントールです。彼は、無限に取り憑かれた数学者でもありました。一対一対応と対角線論法を用いて、自然数のサイズと有理数のサイズが等しいことや、実数のサイズがそれらより大きいことを証明します。
公理に注目して、1つ公理をのぞいたらどうなるかなどの試みもうまれました。以前お話した非ユークリッド幾何学です。
どの分野でも使う論理形式、証明の仕方なども厳密化されました。
1900年にヒルベルトが「ヒルベルト・プログラム」を提唱します。
その中で、彼は、証明を形式化することで、数学全体の完全性と無矛盾性を有限界の操作で示そうと考えました。具体的には、
・数学において真である命題は必ず証明できること。
・公理から形式化された推論をどれだけ行っても、矛盾が示されることは絶対にないということ。
これらを確かな方法を用いて証明しようとする計画を立てます。
しかし、1930年にクルト・ゲーデルが発表した「不完全性定理」が、ヒルベルトの計画に深刻な影響を与えました。とりわけ「自然数論を含む帰納的に記述できる公理系が、無矛盾であれば自身の無矛盾性を証明できない(第2不完全性定理)」は、有限な立場のみではあらゆる公理系の無矛盾性を証明できないとするものです。
ヒルベルト・プログラムでは自然数論だけでなく、実数論、さらには集合論全体の無矛盾性をも、自然数論のような基本的な体系の上で示すことを目的としていたため、この定理によって大きな修正を迫られることになりました。
1934年、ゲンツェンが正規化を用いて自然数論の無矛盾性を証明しますが、「有限の立場」で正当なる証明かどうかは議論の余地があります。
ゲーデルの不完全性定理
第1不完全性定理: 「正しい」けれど「証明できない」問題が、どんな数学体系にも必ず1つはある。」
第2不完全性定理: 「この数学のルールは矛盾がない(正しい)」ということを、そのルール自身を使って証明することはできない。」
不完全性定理を誤用・誤解する方が多いですが、「世の中のすべては不完全である」という意味でも、「論理や理性は限界がある」と意味でもありません。「世界は矛盾にあふれている」とか、「科学が自然界を完全に解明することはできない」などもおかしいです。
「自分の中で、自分が矛盾のないことを言えない」、「自分が正しいか、自分でいうことは難しい」くらいの捉え方でいいのかなと思いますが、そもそも厳密な数学の定理を引用して、何かえらそうなことを言うのは、面白いけれど、危険ですね。
この時期に激論が交わされた数学的テーマはたくさんあります。いずれご紹介したいなあと思っております。
では、失礼します。
enaあざみ野校校長・算数数学担当 飯田
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